2020年11月1日、いわゆる「大阪都」構想の住民投票が行われ、僅差で否決されるということになりました。
大阪の発展を願ってやまない当ブログとしても、当然注目していた選挙ではありますが、「賛成」や「反対」とは全然異なった次元からの感想と考察を行ってみたいと思います。
大阪都構想より、大阪副首都構想の方が良かったのでは?
(注:大阪都の「都」は「みやこ」という意味ではなく、行政機構単位の名称として用いていることを承知のうえで「副首都」と書いています)
勝敗を分けたキャッチフレーズの言霊(ことだま)
大阪自民党は「大阪市がなくなる!」「よくわからなければ反対を!」という一大キャンペーンを張りました。結果的にはこれが功を奏したと思います。特に、「大阪市がなくなってしまうんですよ!」というのは、市民・特に高齢者の不安と恐怖心を煽るキラーフレーズです。良いか悪いかは別として、人々の感情に訴えかける極めて有効なキャンペーンでした。
対する大阪維新の会は、「二重行政の解消で無駄をなくす!」という従来通りのロジックで戦っていました。「二重行政」というのは、確かに日本の地方行政の問題点で、その統治機構改革は日本の成長のために必要なものだということは理性では分かるのですが、「感情」を動かすワードではありません。
「二重行政はない方がいい」と理性で分かっていても、「大阪市がなくなるんですよ!それでいいんですか!?」の方が遥かに脳天を揺さぶるキラーフレーズになります。このキャンペーン合戦での勝敗が、僅差での勝敗を分けた一因だったのではと思います。
では、大阪都賛成派はどうすれば良かったのでしょう?
あくまで結果論ですが、「大阪市がなくなる!」という不安と恐怖を煽る言葉を上回る具体的な「希望」をもっと前面に見せるべきでした。
二重行政があるとかないとかは、政治家や行政家にとっては重要なことなのでしょうが、はっきりいっていち庶民にはどうでも良いことです。そして、途中から住民サービスはどうなるのか、ということに議論の時間が割かれていたようにも思えますが、住民サービスの〇〇が良くなりますよ、とか言っても、まだ実現していないことの証明は難しく、イマイチパンチがありません。
それよりも、もっとパンチの効いた、脳天を揺さぶるような「希望のパワーワード」をぶつけるべきだったと思います。
そういう意味での見出しのタイトルになるのですが、「大阪都」構想よりも、「大阪副首都」構想の方が良かったのではないでしょうか?
「大阪副首都構想」という言葉を選ぶメリット
大阪「都」が、あくまで行政組織としての話であって、「みやこ」ができるわけではないということは理解したうえでの考えですが、「副首都化」の方が具体的で良かったと思います。単なる言葉の問題なのですが、「言霊(ことだま)」は軽視すべきではありません。
「大阪市がなくなるんですよ!それでいいんですか!?」というキラーフレーズに、「二重行政の無駄をなくして大阪を成長させます」というより、「いやいや違います。これから大阪は府と市の力を合わせて副首都を目指すのですよ」といったほうが、はるかに希望に満ち溢れていないでしょうか?
副首都になんかならんで今のままでええ!という人はそう多くないでしょう。副首都化の行程の一部としての「都構想」という見せ方をするべきだったのではと思います。大阪市民のプライドを揺すぶるのです。
また、大阪「都」という名前が、東京都民の誤解を招いているという事実もあります。「都」って何やねん!?日本に二つ首都ができるんか!?という程度の認識の方が数多く存在することも事実で、そのカウンターパンチとして統治機構制度の説明をするよりも、「大阪は府と市の力を合わせて副首都を目指します」と言った方がはるかにスッキリした反論になります。
「大阪副首都構想」・・・どうでしょうかね?大阪市が存続することが決まったので、大阪市が残存する形でということになるのでしょうが、なんとかこれからでも「副首都」目指してもらえませんか?これだと自民党も乗りやすいのではないでしょうか。
年齢のねじれ現象にみえる皮肉な結果
選挙の結果を左右したもう一つの重要な要因、それは年齢別の「賛成」と「反対」の比率だと思います。
30歳台、40歳台は大阪都構想「賛成」が多く、50歳台から年齢が上がるほど「反対」が多かったのは面白い結果です。
比較的若い世代は改革を望み、古い世代は大阪市へのノスタルジーが強いということなのでしょう。
一方で誠に興味深いのは20歳台は「賛成・反対」が拮抗していたことです。30歳台以降の傾向とは明らかに異なります。
30歳台、40歳台というのは、1990年代~2010年ごろまでの、沈んでいく一方だったダメダメ大阪の印象が強い世代で、改革を望む傾向があります。50歳台以降は前回の大阪万博の記憶などもあり、大阪の「良かった時代」も知っているためになかなか改革意欲がない。そして20歳台は、2010年以降に比較的元気を取り戻した大阪の姿を知り、それ以前のダメ大阪のイメージが薄い世代なのだと思います。だから、「大阪を変える必要性」がイマイチ感じられなかった。そして20歳台の賛否拮抗が結果的に僅差の勝敗を分ける一因になったと分析します。
皮肉にも、大阪が少し上向いたことによって、改革への強い必要性が薄らいでしまった側面があります。
まとめ
いわゆる大阪都構想の住民投票の結果について、独自の分析を行いました。
否決の要因は、「不安・恐怖のキラーフレーズを上回る希望を見せれなかったこと」「20歳台以下の世代の支持が伸びなかったこと」だと考えました。
「大阪副首都」構想であれば、分かりやすいし自民・維新相乗りできそうですので、これからでも結構です。新しいマイルストーンを設けて大阪を更に発展させていってもらいたいものです。その過程で大阪市があった方が良いのか、なくても良いのかの議論も改めて起こってくるでしょう。
ついでに国際金融都市も目指してください!笑
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