大阪はスーパーシティ構想に名乗りを上げています。
しかし報道を見ても、「スーパーシティ?何のこっちゃ!」というのが現状ではないでしょうか。そこで、今回はスーパーシティ構想についてちょっと調べてみました。
すると、スーパーシティ構想は2025年に大阪万博をひかえる大阪と抜群の相性のものであるということが分かってきました。
日本が再成長するための切り札:スーパーシティ構想
スーパーシティ構想とは
スーパーシティ構想とは、ざっくりと言うと「未来都市を丸ごと作ろうぜ」という構想です。
国家戦略特区というものが既に存在しますが、スーパーシティ建造のためには複数領域での多層的な連携が必要なため、国家戦略特区以上の大胆な規制緩和が必要です。
そのため、スーパーシティ構想は国家戦略特区を超える国の目玉戦略の一つと言えます。
内閣府の資料には下記のようにあります。
I. 以下のような領域(少なくとも5領域以上など)を広くカバーし、生活全般にまたがる。
①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・介護、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全
II. 2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現する
― 域内は自動走行のみ、現金取扱い・紙書類なしなど
III. 住民が参画し、住民目線でより良い未来社会の実現がなされるよう、ネットワークを最大限に利用する。
うーん、良く分からん。
ざっくりとまとめると、
・2030年ごろまでに実現する。
・具体例として、「域内は自動走行のみ、現金・紙書類なし」など。
目玉戦略にしては、具体例はそれだけ?という感じですが、良いように解釈すれば、地方が他に独自色を出せということでしょう。自動車の自動走行は、それこそ万博会場を一つの社会実験の場にするのはとても良さそうです。
(内閣府公表資料より)
他国の例
資料では、他国の例として、カナダ・トロントと中国・杭州が挙げられています。
①カナダ・トロント
Google系会社が行政と連携し、ありとあらゆる場所での人・自転車・車の動きを把握して、ビッグデータを利用した都市設計を推進している。
②中国・杭州
アリババ系会社が行政と連携し、交通違反や渋滞対策にカメラ映像のAI分析を活用。無人コンビニも展開。
このあたりのカメラ映像を用いたビッグデータ解析は、個人のプライバシーの問題とも関係してくるので、この真似が日本の進むべき道として良いのかどうかは分かりませんが、そのあたりの議論も含めて日本は遅れていると思いますので、是非知恵を絞ってもらいたいです。
一方で、「無人コンビニ」はとても良いと思います。24時間営業維持のための店長の苦労などがちょうど社会問題となっていますし、「大阪万博までに域内のコンビニは完全無人化」というのは実現可能かつ実利もある目標設定ではないでしょうか。
いすれにせよ、スーパーシティ構想は、「街ごとアップグレード」ということでもありますので、高度経済成長期を終え長い停滞期にある日本が再成長するための切り札となりうる構想だと思います。
大阪のスーパーシティ構想
さて、スーパーシティなるものについて、ぼんやりと概要が分かったところで、大阪のスーパーシティ構想について見てみましょう。
大阪府・大阪市では「大阪スマートシティ戦略会議」なるものが既に動いています。その資料です。
(大阪スマートシティ戦略会議公表資料より)
コンセプトは「働き、学び、遊び、楽しむ未来都市」。
大阪スーパーシティのロードマップ
大阪はこれから再開発バブルに突入するというちょうど良いタイミングであることもあって、ロードマップもそれにうまく乗っかることができています。
①うめきた2期街開き(2024年)
2024年に街開きを予定しているうめきた再開発地区にて、実験的にスーパーシティのシステムを構築。
②大阪・関西万博(2025年)
万博自体を未来社会の実験場と設定。
③夢洲まちづくり(2030年)
スマートシティ完成目標時期の2030年ごろと重ねて、万博跡地の開発を行う。
スーパーシティ構想ってまさに大阪のためにあるのでは?というような、既に決定している再開発タイムラインにうまく乗っかってきますね。もちろん、国もスーパーシティ認定のために「リーダーシップのある首長」を条件にしていますので、大阪はモデル地区としてもともと考慮していたかも知れません。
取り組み内容検証
大阪府・大阪市公表の資料に「取り組み内容」も記載されています。
ドローンが「物流」「施設管理」「防犯」の項目に登場しています。安易なドローン頼み?とも思いますが、ドローンを往来させるのにも航空法含め法整備が必要でしょうから、万博予定地の夢洲は海に囲まれドローン特区認定しやすいというメリットは確かにあります。
プライバシー問題との関連性が議論されるべき「防犯」項目ですが、夢洲に限ってはとても相性が良いかも知れません。
夢洲にはIR誘致に伴いカジノが設置される可能性があります。カジノ設置に伴う治安の問題なども懸念されていることから、ドローンや監視カメラを使った防犯システムを「夢洲に限定して」堅牢に作り上げてしまうのは案外いいアイデアかも知れませんね。
「医療」分野のアンチエイジング等は、大阪万博の主要テーマですからごく自然な流れ。
「移動」分野の自動運転、空飛ぶ車、MaaSによる交通運行は、「医療」と並び夢のあるテーマの一つと思います。
あと、個人的に言及しておきたいのは、「環境・ごみ」分野です。
もうみんな忘れてしまっているかと思いますが、G20大阪サミットにて、「大阪」の名を冠する二つの宣言が採択されました。大阪ブルーオシャンビジョンと大阪トラックです。
G20大阪サミットで採択された大阪の名を冠する宣言(旧ブログ)
ざっくりと言うと、「海のプラスチックごみをなくしましょう」というのと、「デジタル経済の国際ルールを決めましょう」ということです。
大阪スーパーシティ内ではペットボトル販売禁止(それに変わる何かのイノベーションを誰か考えてくださいw)とか、大阪スーパーシティでの取引を国際的な電子商取引のモデルとする、というぐらいまでの国際的発信力を目指して欲しいです。
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大阪商工会議所の意見書では・・・
大阪スーパーシティについて調べているうちに、大阪商工会議所の意見書に当たりました。
(大阪商工会議所公表資料より)
けっこういいことが書いてある。特に注目したのが、「データ経済圏形成」。そしてそれを「パッケージとして海外展開」というところです。
やっぱり、大阪は本来民間の力が強いんだな~。
顔認証などのAI技術を駆使したスマートシティに関しては中国がかなり先行しています。なので、2025年の時点でのスマートシティ完成だけを目標にしていても、世界最先端には到達しえません。大阪万博と融合させた「数段階先のイノベーション」を期待したいです。
せっかくの機会なので、大阪が日本の再成長を先導する・大阪モデルを世界基準として発信していく。それくらいの気概で取り組んでいただきたいものです。
まとめ
大阪スーパーシティ構想について簡単に分かりやすく解説いたしました。
・スーパーシティ構想とは、未来都市を丸ごと作ろうぜ、という構想です。
・キャッシュレス化、自動運転などだけでなく、様々な分野でのイノベーションがパッケージで必要になります。
・大阪はもともと大阪万博やその後の夢洲開発の予定があり、国のスーパーシティのモデル地区としてとても親和性が高いです。
大阪スーパーシティ、大阪スマートシティ、グレーター大阪など似たような横文字構想が続きますが、当ブログでは、2025年大阪万博と併せて、スーパーシティ構想についても引き続き注視をしていきたいと思います。
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